ここ最近、本当に冷たい。
 前まで優しかったのに。

 でも、冷たい言葉を浴びせられても別にいい。


 あたし、Sっ気のある人が好きだし。
 イニシャルSの人が好きだし。
 真兄が好き……だし。


 「真兄の言葉責めからも堪えてみせる!」
 「……は?」


 真兄はあたしが叫ぶと嫌そうに顔を顰めた。

 その渋い顔でさえワイルドでカッコイイ。


 「やだっ!真兄カッコイイっ!」


 胸キュンしすぎて堪えられなくなったあたしは、真兄の黒くて柔らかい髪の毛をグシャグシャに撫で回した。


 「おわっ。ちょ、何すんだよ」


 真兄は眉を寄せてあたしを睨む。

 でも、髪の毛が鳥の巣みたいになっていて、睨まれても全然迫力がない。


 「あははっ!真兄!ヒヨコ飼おうよ、ヒヨコ!」
 「お前、いい加減にしろよ」


 真兄はあたしに笑われてムカついたのか、参考書を床に投げ捨てると鬼のような形相であたしに詰め寄ってきた。

 その真兄の禍々しい雰囲気に背筋が凍る。


 思わず逃げようと後ずさり。
 そしたらトンと背中に硬い物が当たった。


 「げ……テレビ……」


 振り返って見てみればテレビがあたしの逃げ道を塞いでる。


 テレビめ……!さては真兄の忠実な僕だな……。
 なんて悪態をついても仕方がない。