「照れてやんの」
 「照れてないって」
 「嘘ばっか〜。イチャつくなし」
 「イチャついてないって!」
 「そう言って何だかんだお持ち帰りするんでしょ?」
 「しねーわ!ちゃんと家まで送り届けるし」


 ニマニマ笑う和美に優太はタジタジ。ムキになって言い返していたかと思うと、あたしを見て照れくさそうにそっぽを向いた。

 その姿にちょっと萌えて「優太になら持って帰られたい〜!」と腕を組みに行ったあたしは、わりと本気。

 何ならあたしの方が優太を持って帰りたい。


 「だからお前は、またそういうことを言う……」

 優太は焦ったようにあたしを二度見すると、オデコに手のひらを当てて、物凄く恥ずかしそうに呟いた。

 もー、まいったな~、って感じ。

 でも、否定しないところを見ると満更でもないのかも。

 目に見えないところでじわじわと関係は深まっていってる。


 兎にも角にも、こうやって少しずつスキンシップを増やして距離を縮めていくのだ。

 自分の方からコツコツと。優太の方から進んで来てくれるようになるまで。


 「あんまりくっついたらマズイって」
 「どうして?」
 「監督も祭りに来てるから」
 「怒られる?」
 「おちょくられる」
 「マジ〜?じゃあ、梨花と手を繋ぐように監督から指示を出してもらお〜」
 「待て待て。本気でヤメろよ、和美。あの人そういう悪ノリが好物なんだから」


 キョロキョロとしながら歩き出した和美に優太は心底焦った顔を向ける。
 
 この様子じゃ、きっと先に進むのはまだまだ後の話だな〜と思いつつ。

あたしは「リンゴが飴が食べたい〜!」と優太に甘えながら、屋台が並ぶ神社の中へと向かったのだった。


Fin


 「あ、送り狼って線もあるよね」
 「だから、ないって」