「ほんとあり得ない」

 生徒で賑わう廊下をひたすら無意味に足音を立てて歩く。すれ違う度にジロジロ見られてるけど、そんなの関係ない。あたしは今お怒り中だし。


 しかし、いざ啓介に背中を向けて立ち去ってみたのは良いけど、大丈夫かな?今更、心配になってきた。

 まさか、あの女の子とあのまま空き教室に……なんてないよね?

 あぁ、もう。考えるだけで泣きそうだし。目に涙が溜まってくる。


 あたしと啓介は付き合って2ヶ月ちょっと。付き合いたての啓介はあんな男じゃなかった。

 優しくて、あたしをいつも優先してくれて。“梨花だけだよ”そう何度も言ってくれてたのに。


 それも最初の3週間だけ。ここ最近は女の子を取っ替え引っ替えしている。

 何が梨花だけよ。何人いるのさ、あんたの特別は。やっぱり超軽い男じゃん。

 結局あたしのことも遊び……なのかな?そうだとしたら悔しいー!鬱陶しすぎて腹が立つ。

 あんなやつに惚れている自分がムカつく。口だけの男なのに。


 それでも愛されたい、なんて思っちゃう自分は本当に馬鹿。


 1人でめそめそ泣きそうになってさ。馬鹿みたい。