「優太」
 「……何?」
 「だから優太」
 「……え?俺?」


 そんなあたしのハートを揺さぶるくらいのホームランを放った優太を、選ぶに決まってるでしょうが……!


 「……は?」

 明らかに驚愕した表情を浮かべる啓介にあたしは……。


 「今までお世話になりましたー!さようなら。浮気男ー!」

 力いっぱい叫んで優太の手を引き背中を向けた。

 啓介のお得意の舌打ちが聞こえたけど、もうどうでもいい。浮気者はうんざりなの。

 それに、あたしの彼氏様は今日から優太だし。


 「ねぇ、優太。今年の夏はお祭りと、海と、花火に行きた~い」
 「いや、いいけどさ……」
 「でも、やっぱり1番は甲子園に連れて行って欲しい」
 「ほんと可愛いな。お前。ってそれよりもさ……」
 「何~?」
 「……さっき言ったのマジ?俺、本気に取っていいの?」


 不安げにあたしを見つめる優太に愛しさが込み上げる。


 「それってホームランを打ったのにファールじゃないですか? って聞くのと一緒だよ」

 足を止めてそう言い返したあたしに優太は「なるほどな」と照れくさそうに笑った。


 ドコまでも優しい優太。
 ドコまでも我儘なあたし。
 プラスとマイナスみたいでちょうどいいんじゃない?


 「いっぱい可愛いがってね?」


 Fin


 「ね、部活行かなくていいの?」
 「大丈夫。さっきから監督がニヤニヤ笑いながら隠れてこっち見てるし」