「何? 急いでるんだけど」

 しつこい啓介にうんざりする。

 駄目だ。あたし。本気で啓介が鬱陶しく思えてきた。


 「いや、お前は俺の女じゃねぇの? 」

 「はい?」

 「なのに俺を置いてそいつと消えるとか、あり得なくね?」

 そう言ってズボンのポケットに両手を突っ込み、顔を歪めてあたしを睨む啓介。

 どの口がそれを言いやがりますか。


 「はぁ……」

 呆れて溜め息しか出てこない。散々、浮気しておいて今さら独占欲を持たれても。


 「なぁ?聞いてんだろ?答えろって」

 更に眉間に深く皺を寄せるバカ男。苛々しすぎて、あたしは爪が食い込みそうなくらい拳を握り締めた。

 もう殴ってやりたい。


 「浮気してたくせに」

 あたし以外の女の子とキスしてたくせに。あたしなんて愛していないくせに。ってかあたし、コイツのドコが好きなんだ?


 「だから何だよ? 男は浮気するもんだろうが」

 至極当たり前だと言わんばかりに啓介は鼻で笑う。
 そんな啓介にもう……。


 「はい、プッチーン」

 優太がキレた。