「何やってんだ?」

 人が少なくなった中庭に不機嫌そうな低い声が響く。


 「……え?」
 
 いきなり背後から声を掛けられ、驚いたあたしは勢いよく振り向いた。

 嫌なくらい聞き慣れた声だと思ったら。やっぱり啓介だった。


 「こんなところで男と何やってんだ?梨花」

 啓介は自分のことを棚に上げて偉そうに尋ねてくる。


 あんたが“何やってんだ”だよ。せっかく優太と楽しく話してたのに。


 「別に~。 作戦会議中。 行こ? 優太」


 浮気者のくせに彼氏面する啓介に心底苛立って、あたしは優太の腕を引いた。早く部活に行かなきゃ優太が本気で監督に怒られちゃうし。


 「……おう」

 優太は一瞬だけ戸惑ったように目を見開いたけど、素直にあたしに引かれて歩いてくれた。歩いてくれたのに……。


 「待てよ」

 空気の読めないバカ男がそれを遮ってくる。