「ありがとね」

 「おぅ」

 「今のうちに優太の彼女に立候補しておこうかな~」


 しんみりした空気を壊したかったあたしは優太を笑わせようと思ってそう言った。

 案の定、優太はケラケラ笑いながらあたしの頭をコツと軽く叩く。……はずだったのに。


 「いいよ」

 なんて言って顔を近付けてくるから心底焦る。


 「ちょっ……、ちょっと待って!冗談だし」

 慌てて優太の体を押し返す。

 本気に捉えるなんて思ってもみなかった。硬派そうだし。

 あ、でも硬派な男はそもそも抱き締めてきたりしないか。


 「冗談だよ」

 優太はそう言ってあっさりとあたしから離れた。

 メチャクチャ潔よい。


 「ビックリした〜」

 そりゃそうか。冗談に決まってるよね。

 本気にしてるの、あたしの方じゃん。

 心臓の鼓動が激しくなって落ち着かない。


 「祭り、楽しみだな」

 顔が熱くて仕方のないあたしと違い、優太は何事もなかったかのように笑った。

 何だか腑に落ちないけど、まぁいいや。

 疑問が残りつつも、あたしは優太にニッコリ笑い返した。