「そんなこと気にすんなよ」
 「でも……」
 「それより大丈夫か?」


 それなのに優太は心配するあたし以上に心配そうに聞き返してくる。

 ドコまで優しいんだ優太は。ほんと、あり得ない。


 「ありがと。 大丈夫だから。やっぱり下ろしてもいいよ」

 自分からおんぶして貰っておいて、あたしは本当にワガママ。
 
 だから啓介にも飽きられたのかな……。そう思ったら、また泣きそうになってきた。

 憂鬱な気分になりつつ、しゃがんでくれた優太の背中からゆっくり下りる。

 それが寂しいと思うあたしは人肌が恋しいのかも知れない。


 「大丈夫じゃないだろ? 何があったか言えよ。 俺のことはいいからさ」

 立ち上がった優太は真剣な顔であたしの顔を覗き込んできた。

 心の底から心配そう。申し訳ないな……。あたし、優太に心配をかけすぎだし。


 「何でもないよ。ありがと」

 お礼を言って精一杯笑顔を作ってみる。これ以上、気を遣わせたらイケないと思って。


 しかし、優太はギュッと口を結んでしまった。

 視線を外して眉間に皺を寄せて、怒っているように見える。

 いい加減、ワガママなあたしに愛想を尽かしたのかも……。


 「もしかして、あたしのこと嫌いになった?」

 優太はたとえ本当に嫌いでも嫌いだなんて絶対に言わない人だけど。優太の口から嫌いじゃないって言って欲しくて、つい尋ねてしまった。

 実際にそうだとしたら困らすだけなのに。


 「嫌いになんか、なってないけどさ……」

 優太は言いにくそうに歯切れ悪く口を閉じる。落ち着きなく頭を掻いて相当モヤッとしている様子だ。