それから毎週私たちは顔を合わせるようになった。


 カフェ『STAR』の定休日は、私と流星の貸し切り。


 でも、いっしょに帰ったのはあれっきり。

 さすがにお互い受験生だし、流星は部活も生徒会もやっている。

 彼の予定がない日はめったになくて、私は宿題をしたり本を読んだりしながら、流星の帰りを待っていた。

 彼が帰ってくるとコーヒーを一杯ごちそうになり、談笑して帰る。


 それが私と流星の二人きりの時間。


 流星はどう思ってるか知らないけれど、これは私にとっては大きな楽しみだった。



 そして、夏が過ぎ、秋が来た。


 みんなの話題の中心は、受験のこと、高校のこと。


 流星は成績もトップクラスでいつも学年三番以内に入ってる。対して私は中の上くらいだった。


 そういえば流星が県外の高校を受験するという話を、こないだ姫野さんから聞いていた。

 彼女はクラスの美化委員で、毎週の委員会の時に流星と顔を合わせるらしい。



 放課後。

 いつもの流星とのひととき。

 家までの、帰り道。


 暗くなるのが早くなったから、最近は送ってくれるようになった。

 少しでも長く流星といられるから、嬉しかった。


「このあと、まだ時間ある?」

「うん」

「ちょっと遠回りしよっか」


 流星と並んで、少し遠回りのルートを歩いた。


「流星、県外の高校受験するって聞いたけどほんと?」

「うん? 誰が言ってた?」

「……いろはちゃん」

「いろは? 誰?」

「姫野さん、私のクラスの」

「ああ、そんな話をしたこともあったかな」

「ふーん」

「県外に行くつもりはないよ。無難に地元の海星かな」

「うわ、一番の進学校じゃん。やっぱり偏差値高い人は違うねえ」

「咲麻はどうするの?」

「うーん、高専もありかなって思ってる」

「え、高専? なんで?」

「情報系、興味あるしね」

「高専って男、多いんじゃなかった?」

「それがどうかした?」

「いや、別に……なんでも」


 ちらりと横目でうかがう流星の横顔。


 表情は読めない。


 昔なら泣いてるか笑ってるかのどちらかだった単純な表情も、今では何を考えてるのかわからないことが多々ある。


「ホントのこと言うとさ、咲麻と同じ高校いきたいんだ」

「……そう、なの?」

「うん、咲麻は?」

「まあ、行けるなら……でも海星は、どうだろう……私の成績じゃギリギリアウトかも」

「いっしょに行こうよ。部活も終わったし時間はあるから、いっしょに勉強しよ」

「そう言ってくれて嬉しいけど、りゅうの足は引っ張りたくないし」

「なんで! そんな風に思わないでよ」


 珍しく強めの口調で、私につっかかってくる。


「俺は本気だよ。咲麻と同じ学校にいきたいから」

「わかった。そこまで言うなら私も腹くくろうかな。なんとかりゅうにくらいつくよ」

「それでこそ僕の知ってる咲麻だよ! あ、そうだ。来週、楽しみにしててね。じゃあまた」


 そう言って流星は軽やかに去っていった。