やっぱりカフェ『STAR』は、今日は休みだった。


「休みなのに、いいの?」

「うん、今日は特別。咲麻と俺の貸し切り」

「……ねえ、いつから『俺』って言うようになったの?」

「え、いつからだろ……中学あがったくらい。変かな?」


 成長とともに一人称が変わることは、たぶん男の子にとっては普通なんだろうけど一応聞いてみる。

 もしかしたらこっぱずかしいことだし、聞かれたくないかもだけど、そんな彼の反応も見てみたくて意地悪で突っ込んでみた。


「昔は僕って言ってたから、変わったなあって思ってさ」

「俺っていうの、そんなに変?」

「んーん、いいと思うよ」

「そっか。座ってて、今コーヒー淹れるから」

「え、コーヒー!?」

「うん、飲めるでしょ?」


 あの頃は私も流星も苦くて飲めなかったけど、お互い少しは味がわかるくらいには成長したはずだ。


 でもまさか、流星がコーヒーを淹れてくれるなんて思ってもみなかった。


 私以上に大人びた流星に、少し戸惑いを感じる。口には出さないけど。


 しばらくしてコーヒーのいい香りが漂ってくる。


「どうぞ、ミルクと砂糖はどうする?」

「んー、いらない」

「ほんとに!? すごいね。俺ミルクは入れるけど」

「……じゃあ、私もミルク」

「あは、なにそれ。でも一回、ブラックで飲んでみて」


 すすめられるままに、一口飲んでみる。


「あっ、おいしい」

「お! よかったー」


 コーヒーがこんなにおいしく感じたのは初めてだった。

 流星が私のために淹れてくれたからだろうか。


 その後、二人でまた話をした。

 話題は幼稚園や小学校のことばかり。

 本当は今の学校でのことも聞いてみたかったけど。

 私に気を使ってあの頃の思い出話を語ってくれてるんだろうか。