『急でごめん、今日時間ある?』


 流星からそんなラインが来たのは、ホームルームが終わった直後のこと。


『うん大丈夫、どうかした?』


 間を置かず、返信する。


『よかったらうちの店、寄っていかない? 話したいこともあるし』


 うそ、ずっと話すきっかけを探してたから、素直にうれしかった。


 あれ? でもたしか今日はお店は定休日のはずだけど……。

 そう思いつつ、私はそのことには触れずに返信した。


『いいよ』


 それだけ打ってから、すぐに教室を飛び出した。


 流星は部活が終わってから来るのかな。宿題でもして待ってようかな。


 昔と違ってコーヒーのよさもわかるようになったし、また行きたいと思っていたのでテンションが上がっていた。


 すると昇降口を出たところで、突然後ろから声をかけられる。


「咲麻! よかった、やっと追いついた!」

「りゅう? あれ、どうしたの?」


 息を整えながら、流星は私の横にきて自然と歩く。


「どうして先に帰っちゃうの? 教室に行ったらもういないって言われてびっくりしたよ」

「え……あー」


 そういうことか。


 放課後にうちの店で、というのはいっしょに帰ろうという意味も含まれていたのだ。


「ごめん。でも、今日は部活ないの?」

「今日はグランド整備の日で、部活は休み」

「ふーん。生徒会は?」

「生徒会の集まりも無し。今日は珍しく早く帰れるから、咲麻といっしょに帰りたいなって思って」

「そっか」


 それならそうと言ってくれないと困る。

 私はてっきり部活帰りの流星をカフェで待ってるつもりだったし。


 でも──。


 教室にわざわざ呼びに来たのか、私を。

 その時、姫野さんはまだ教室に残っていたのかな。

 流星が私を探していること、彼女は気づいたのかな。


 別に、気にする必要もないことなんだけど、ついつい気にしてしまう。


「私といっしょに帰っても平気?」

「どういう意味?」

「んーん、別に」

「昔はよくいっしょに帰ったよね」

「うん」

「あそこのコンビニ覚えてる? なくなっちゃったんだよ」

「えー? あれ? でも私がいたころにはもうなかった気がするけど」

「あ、そうだっけ? あはは、そういえばさ──」


 二人の話題は自然と小さい頃の思い出話になっていた。

 少し変わった街並みを時折話題に出しながら、私たちは並んで帰った。