彼女は僕にとって特別だった。

 初めてしゃべった時のドキドキは、今でも忘れられない。

 明るくて、かわいくて、みんなの人気者、僕なんかじゃ手の届かない存在。

 体が弱くて内気な僕なんかとも遊んでくれる彼女に、本当に救われていた。

 

 だからこそ、お別れの時が来たことはつらかったし、めちゃくちゃに泣いたのを覚えている。

 男ならメソメソすんなって言った彼女の目は……真っ赤に腫れていたっけ。




 幼稚園の時、初めてプロポーズしたことを彼女は覚えてるだろうか。

 いじめられっ子のあんたが私を守れるの? って言われてぐうの音も出なかった。

 それから何度も何度も告白を行ったけども、いつもあっけなくふられてたっけ。



 夏休み最終日に、宿題を必死に終わらせたこと。

 失くしてしまったボールをいっしょに探してくれたこと。

 初めて飲んだコーヒーの苦味に二人して顔をしかめたこと。



 すべてがいい思い出だ。



 彼女がこの町に戻ってくるって聞いた時、嬉しくて嬉しくて眠れなかった。

 久しぶりに見た彼女はとても綺麗になっていて、見惚れてしまった。

 姿勢がよくてハキハキと歩く姿は昔から変わってない。

 かざらない美しさ、それが彼女の魅力だ。



 彼女は、自分なんかって謙遜していたけれど……逆だよ。

 僕なんかとずっといっしょにいてくれて、本当に救われていた。

 だから、彼女に釣り合う男になるために、男として認めてもらうために何事も全力で取り組んだ。

 彼女が振り向いてくれるような男になるために、泣き虫だった自分を変えるために、この三年間あらゆる努力をした。



 さあ。明日は、彼女と放課後デートの日。

 彼女の誕生日でもある大事な記念日。

 他の男にとられないように、しっかり思いを伝えようと思う。


 これからも……ずっといっしょだよ。



Fin.