そうユリナに誘われたから来たけど、賑やかで色んなお店がある王都を見ていると来てよかったと思う。人の出入りが激しいためか、住んでいる町では見慣れないものばかりだ。

「王都に前に来たのって確か一年前だっけ?」

私がそう言うと、ユリナは「そういえばそうね。まあなかなか来られないから」と笑いながら言う。確かに私たちの町から王都までは数日もかかる。その旅の費用はもちろん安くはない。

「普段そんなに来られないからこそ、今日はいっぱいお買い物しなきゃ!」

そうユリナが張り切る中、私の視界に本屋が映った。本屋のドアには貼り紙がしてあり、そこには『シャロン・ベイカーの新作入荷済み!」と書かれている。シャロン・ベイカーは大人気小説家だ。彼女の小説はすぐに売り切れてしまう。

「ユリナ、ちょっと本屋さん見てきていい?」

「いいよ。じゃあ、お互い買い物が終わったら広場で待ち合わせしましょ」

ユリナはそう言い、市場の方へと向かっていく。私はそれを見送った後、本屋の中へと入った。カランコロンとドアに取り付けられたベルが音を立てる。