悪魔「婆とはなんだ。ったく、口の悪い天使だな。ま、とにかくよ、その業突く婆がよ、今夜くたばることになってんだ。コロリとな」
天使「そりゃおめえ、おめえが魂の緒を切るからでねえけ」
悪魔「だから……話の腰を折るなって。この俺様に願をかけた分、寿命を断っていいの知ってんだろ?悪魔の当然の権利だ」
天使「ばってん、んだからってはあ、それがあの子となんの関係があるとよ?」
悪魔「今度は博多弁になりやがったな、この方便アラカルト野郎。だからよ、あの子はその婆の講に入(へえ)ってんだよ、講にな。騙されて。婆の魂なんざあどーでもいいがあの子の魂はピカ一(いち)だ。どうでも手に入れてえや。どうだい、手を引いてくれりゃあ婆の魂を進呈するぜ。おめえに」
天使「いらねえや、あんな婆の」
悪魔「(ずっこけて)あ、あのよ。おめえほんとに天使なのか?」
天使「いや、だからつい本音が……神よ、許し給え。アーメン。しかしおめえ、んだからってそれがあの子の、和子の魂まで取っていいことにゃあならねえぞ」
悪魔「野郎、なんであの子の名前知ってるんだ?……あ、わかった。さてはてめえも始めっから目をつけてやがったな、あの子に」
天使「め、目をつけてたなんて……そったらばこと云うもんでねえだ。神様から守護を仰せつかっておりましただ。アーメン」
悪魔「なーにが仰せつかっていただ、アーメンだ。ばかやろ。だけどな、もう遅(おせー)よ。婆、つまりあのお米婆の欲深(ぶけ)え願いを、いままで散々叶(かねー)えてやったんだ。その代わりに婆始め会員一同の魂を俺に寄こすってえ条件でな。これが悪魔との契約つーやつだな。てめえだって知ってんだろ?