良夫「(受話器を取って)はい。もしもし、どなた?……ああ、あんたか。やっぱり……え?何?大変って何が……あーあ、そうそう。そりゃ大変だ。伝えておくよ。じゃあな」

良夫、一方的に電話を切る。台所に戻る途中でついに悪魔が袖を引く。

悪魔「野郎、良夫……」
天使「止めっちゅうに……(悪魔を抑える)」
良夫「(よろめいて)ありゃ?なんだこりゃ。誰か引っ張ったような……(見廻すが誰もいない)」
為子「何してんのよ、あんた。誰からだったの?電話」
良夫「(まだ辺りを見ながら)ああ?……いや、だからあいつ、お前と和子のお仲間だよ」
為子「ああ、金子(かねこ:姓じゃありません、下の名前)さんね。何だって?」
良夫「知らん。大変だとか云ってた」
為子「何が大変なのよ」
良夫「だから知らん。電話切れた。いや、俺が切った」
為子「まーったく。もういいからお風呂入ってよ」
悪魔「ええい、もう問答無用だ!」

悪魔、良夫の腕を掴んで風呂場へ引きずり込もうとする。

天使「悪魔、なんばすっとね?!……うーん、しかしおらももう待ちくたびれただ。加勢するだ」
良夫「ああ、母さん、助け……」
悪魔「やかましい!(良夫の口を手で押さえる)おう、かっぺ、風呂の戸を開けろ」
天使「合点ずら」

悪魔と天使、良夫を風呂場に引きずり込んで戸を閉める。

為子「ああ、やっと入ってくれたわ。でも何か変だったわね。ま、いっか。さてとじゃあ和子を呼んで来よう」
良夫「(風呂場から)止めて!誰か助け……パ、パンツ脱がされるーっ!母さんーっ!うっ(口を塞がれる)」
為子「パンツ脱がなきゃ入れないじゃないのよ。なあに云ってんだか……」