○夕凪の家


夕凪「……」
真希「……ゆうちゃん、起きないの?」
夕凪「なんで、いるの……」


真っ黒な髪の毛に、猫のような黄緑色の瞳。
整った顔立ちは、老若男女心を惹きつける。


真希「おはよう、やっぱり起きてたんじゃん」
夕凪「……知らない」


目があってしまったから、夕凪は布団の中で反対向きに身体を動かす。


真希「一緒に行こう?」
夕凪「嫌。先行って」
真希「電車流すよ」
夕凪「……別に」


そっけない態度の夕凪を見て淡々と会話を続ける真希の様子は、もうそれになれているようだった。

高校生になり、親同士の仲が良かったことから駅に近いマンションに、隣同士で住んでいる2人。

朝に弱い夕凪を真希は、毎日起こしに来ていた。


真希「はぁ……夕凪、なんでそんなに俺に冷たくするの?悲しいよ」
夕凪「真希なんて嫌いだからだよっ……もう、関わらないで」


少し震え気味にそう言った夕凪。


真希「……じゃあ、先行ってるからね」
夕凪「うん。ちゃんと、“約束”守ってね」
真希「……うん」



ひとつ返事をした真希は、振り返らず行ってしまった。



夕凪(……嫌い、真希なんて)