「ふーん、で?」
と、全く興味ない感じ。
そりゃそうだよね...
「矢真斗!!!ごめんね、瑠愛ちゃん。コイツ、こういうこと言うけど根はいい奴だから」
と、こちらもフォローしていた。
別に気にしてないけど...
「大丈夫です、気にしてませんから」
「ありがとう」
なんのお礼だろう?
別にお礼言われることしてないけど...
「無愛想だからなに?関係なくない?俺が克服させてやる」
と、いきなり言う矢真斗さん。
私だけじゃなく、天音も透さんもびっくりしている。
「矢真斗、いきなり何言ってんの?」
透さんが聞くと、矢真斗さんは
「俺、コイツほっとけないから」
と、平然と言っていた。
ほっとけないって何?
どうして?
「じゃあ、俺呼ばれたから。克服する気になったら指名して」
そう言って、矢真斗さんはどこかへ行ってしまった。
私が聞きたかったこと聞ける暇もなく…
それからは、色んな人がついてくれたけど無愛想を丸出しだった。
矢真斗さんのことだけが頭から離れず、でも指名する勇気はなかった。
天音は、指名したら?って何度も言ってくれたけど断り続け…
結局帰るまで指名することはなかった。
「瑠愛、よかったの?矢真斗のこと」
「うん、いいの。もう会うことないし、指名しても迷惑かけるだけだから」
気づいていた。
矢真斗さんのこと、気になってる自分を。
ホストにハマる自分が怖くなり、勇気を出せなかった自分もいた。
「そっか…」
「せっかく誘ってくれたのに、ごめん」
と、謝るとなんのこと?って不思議そうに私を見る天音。
「瑠愛、謝らなくていいから!私こそ、無理やりごめんね」
無理やりなんかじゃない。
私が興味あったからついてきただけ。
「気にしないで。天音がハマってるホストに興味あったから」
「そっか。また、一緒に行こう?」
「…………ごめん」
せっかく誘ってくれてるけど、もう行くことはない。
次矢真斗さんに会ってしまったら、私は自分をセーブする自信がないから。
「そっか。まぁ、無理はさせたくないし。気が向いたら教えて!」
「うん」
「じゃあ、またね〜!」
「またね」
そう言って、私たちは解散した。
気が向いたら、か。
多分、気がむくことはない。
なんだか帰る気になれず、目に付いたBARに入ることにした。
「矢真斗、今日なんか変だぞ」
と、何人に言われたんだろうか。
俺は、さっきついた初回の女...瑠愛だっけ?が気になっていた。
そのせいか、みんなから言われる。
結局アイツは、俺を指名しないまま帰っていった。
なぜほっとけないのか、自分自身わからねぇけど
気になるんだ、アイツのこと。
「矢真斗、今日アフター付き合ってくんね?」
アイツのこと考えていると、透からアフター付き合えと言われて困り果てた。
基本的に俺は、誰かのアフターに付き合うことが嫌いだ。
めんどくさいし。
だけど今日は、まだ飲みたい気分だし付き合うことにした。
「わかった」
それからの営業は長く感じ、姫の話しなんて正直覚えていない。
ずっとアイツが気になって、それどころじゃなかった。
アフターの場所は、店のグループのBAR。
俺も透も、アフターは基本的にここ。
酒飲んだあとの飯は辛いし、ホテルとかまず有り得ねぇ。
たまに、ホテル行こって誘われることあるけど...
「矢真斗くん、今日来てくれてありがとう!私が透にワガママ言っちゃって」
と、透の姫が謝ってくる。
こいつは、いつもそう。
だから俺は透から頼まれたとき、コイツだろうなって予想はしていた。
「別にいいよ。飲みたかった気分だし」
「そっか」
それからしばらく飲んで、帰ろうとしたとき...
カウンター席で男に抱えられる女を見つけた。
なんか、ヤバそうな感じ。
連れか?と思い気にするつもりもなかったが、ふと顔を見るとその女は瑠愛だった。
「アイツ...」
俺は気づいたら、瑠愛のもとへ歩き出した。
「おい、矢真斗!」
後ろで透に呼ばれた気がしたが、今はどうでもいい。
「俺の女に何してんの?」
「は?誰だよ!」
コイツ...
どこかで見覚えがあった。
けど、思い出せねぇ。
「コイツの彼氏だけど?」
「んだよ、彼氏持ちかよ」
と言い、逃げ出す男。
あんな奴どうでもいい。
「おい、起きろ」
と、起こしてみるも全然反応がない。
薬でも盛られたか?
「矢真斗、この子って確か...」
「瑠愛だな」
「やっぱり...あの男、常習犯だぞ」
.......あー、思い出した。
女に眠剤入れた酒を飲ませてホテルに連れていき襲う奴だ。
「やっぱり、盛られてたか」
さて、どうしたらいいことやら。
ほっとくわけにいかねぇしな...
「コイツ、連れて帰るわ」
「は?」
「ほっとくわけにいかねぇだろ」
「そうだけど...」
何をそんなに躊躇ってんだよ。
「無愛想すぎるから、この子」
お前もそんなこと思うのかよ。
店では愛想良くしてたくせに。
「お前って最低」
「は?」
「とりあえず、お前の姫にこのこと教えておけ」
「あ、あぁ...」
俺は瑠愛を担ぎ、店を後にした。
そして、俺の家へと連れて帰る。
別に何かするわけじゃない。
コイツの家知らねぇし、ホテルなんて行きたくねぇし。
仕方なく連れてくことにした。
ったく、世話のやける女だ。
だけど、なんで瑠愛が1人であの店にいたんだ?
あの男にナンパでもされて着いてったのか?
いや、瑠愛のことだから有り得ないだろうな。
無愛想になるくらい人見知りするんだから。
俺は、さっぱり理解ができなかった。
目が覚めると、知らない部屋だった。
確か...天音とバイバイしたあと、帰る気になれず目に入ったBARで飲んでたはず...
だんだん眠くなったとこまでは覚えてる。
でも、おかしいんだよね。
つぶれるほど飲んだつもりはない。
色々考えてると「目が覚めたか」と、男の人の声が聞こえた。
え?男の人...?
「あ...」
声がする方を見てみると、そこには矢真斗さんがいた。
どうして、矢真斗さんが...?
「その様子だと、記憶ないんだな」
「えっと...」
「お前、BARで眠剤入った酒飲まされてた」
眠剤...?
どういうこと?
「眠ったお前を、男がホテルに連れ込もうとしたんだよ」
そんなこと、ドラマとか漫画の世界だけだと思ってた。
まさか、自分がこんな怖いことになるとは思ってもみなかった。
「でも、どうして矢真斗さんが...」
「アフターであの店行ってたから」
「そうだったんですね」
「見かけたらお前だったし、ほっとけないから連れて帰ってきた」
ということは、ここは矢真斗さんの家か。
よく見ると、綺麗な部屋。
「ありがとうございました」
「別に。体は大丈夫か?」
「はい、とりあえず」
矢真斗さんって、クールだけど優しい。
ダメだ、ほんと。
早く帰らないと...
そう思い、立ち上がった。
だけどふらついてしまい、倒れ込む。
「あっぶねぇ。まだ寝とけ」
「いえ、迷惑かけてしまうので...」
昨日、たくさん迷惑かけてしまった。
これ以上迷惑なんてかけられない。
それに、私がハマってしまったら...