「瑠愛〜、ホスト行こ!」
「うん、いいよ」
私は、西山 瑠愛(にしやま るな)23歳。
一緒にいる子は、工藤 天音(くどう あまね)23歳。
私たちは、大学からの友達。
職場は離れたけど、週1で遊ぶくらい仲がいい。
私は、人見知りが激しく無愛想になってしまう。
こんな性格だから、友達も少ない。
でも天音は、私と真逆の性格。
明るくて誰にも優しくて、周りに気配りできる子。
こんな子が、私と友達になってくれたことには大感謝してる。
「乗り気でない?」
「いや、そうじゃないけど...」
「そう?嫌なら嫌でいいからね?無理しないで」
「ありがとう。大丈夫、天音」
乗り気でないこと知ったら、絶対いつもみたく居酒屋からのカラオケに変更してくれる。
でも正直、天音がハマってるホストに興味があった。
そして私たちは、天音が通うホストクラブへついた。
お店に入ると、天音は指名をして私は初回で入店。
緊張するな...。
「瑠愛、緊張しなくて大丈夫だよ」
「うん、でも...」
「無愛想になっても、気にしなくていいから!」
天音は、私の悪い癖を知っている。
不安になってたこと、気づいてたんだね...
「大丈夫かな...」
「大丈夫!瑠愛、無愛想でも可愛いんだから!!!」
いや、よくわからないけど。
可愛くもないし、もしたとえ可愛くても無愛想だったら...
なんて話してると、天音の指名したホストともう1人私たちの席にやってきた。
「天音ちゃん、今日も来てくれてありがとう」
「透(しゅう)〜!ううん、今日は連れてきたかった子がいたから♪」
「そっか、お友達連れてきてくれたんだね!初めまして、透です!」
と、自己紹介をしてくれた。
優しそうでかっこいい。
「初めまして」
そして、私の隣に座ってる人も自己紹介をしてくれた。
「俺、矢真斗(やまと)」
名刺を渡してくれると共に自己紹介してくれるホスト。
これが彼との出会いだった。
「どうも...」
この人は無愛想というより、クールな人っぽい。
私とは違う。
それは当たり前だよね。
接客業なわけだし、私みたいに無愛想な人はなかなかいないであろう。
私の無愛想に、2人は気づいてないのか気付かないふりなのか…
それとも、そもそも私に興味がないだけか。
私の無愛想に触れることはなかった。
「この子、極度の人見知りで無愛想になるけどとっても可愛い子だから!いじめないでよ?」
と、フォローしてくれる天音。
いつもフォローしてくれる天音には、頭が上がらない。
「人見知りなんだね。大丈夫だよ、気にしないでね」
と、優しく言ってくれる透さん。
だけど、矢真斗って人は...
「ふーん、で?」
と、全く興味ない感じ。
そりゃそうだよね...
「矢真斗!!!ごめんね、瑠愛ちゃん。コイツ、こういうこと言うけど根はいい奴だから」
と、こちらもフォローしていた。
別に気にしてないけど...
「大丈夫です、気にしてませんから」
「ありがとう」
なんのお礼だろう?
別にお礼言われることしてないけど...
「無愛想だからなに?関係なくない?俺が克服させてやる」
と、いきなり言う矢真斗さん。
私だけじゃなく、天音も透さんもびっくりしている。
「矢真斗、いきなり何言ってんの?」
透さんが聞くと、矢真斗さんは
「俺、コイツほっとけないから」
と、平然と言っていた。
ほっとけないって何?
どうして?
「じゃあ、俺呼ばれたから。克服する気になったら指名して」
そう言って、矢真斗さんはどこかへ行ってしまった。
私が聞きたかったこと聞ける暇もなく…
それからは、色んな人がついてくれたけど無愛想を丸出しだった。
矢真斗さんのことだけが頭から離れず、でも指名する勇気はなかった。
天音は、指名したら?って何度も言ってくれたけど断り続け…
結局帰るまで指名することはなかった。
「瑠愛、よかったの?矢真斗のこと」
「うん、いいの。もう会うことないし、指名しても迷惑かけるだけだから」
気づいていた。
矢真斗さんのこと、気になってる自分を。
ホストにハマる自分が怖くなり、勇気を出せなかった自分もいた。
「そっか…」
「せっかく誘ってくれたのに、ごめん」
と、謝るとなんのこと?って不思議そうに私を見る天音。
「瑠愛、謝らなくていいから!私こそ、無理やりごめんね」
無理やりなんかじゃない。
私が興味あったからついてきただけ。
「気にしないで。天音がハマってるホストに興味あったから」
「そっか。また、一緒に行こう?」
「…………ごめん」
せっかく誘ってくれてるけど、もう行くことはない。
次矢真斗さんに会ってしまったら、私は自分をセーブする自信がないから。
「そっか。まぁ、無理はさせたくないし。気が向いたら教えて!」
「うん」
「じゃあ、またね〜!」
「またね」
そう言って、私たちは解散した。
気が向いたら、か。
多分、気がむくことはない。
なんだか帰る気になれず、目に付いたBARに入ることにした。