それは嘘だった。
 本当は、古傷にさえなってないことに、今更気づいたのだから。
「冴木さんと親しくしてるって聞いて、あずなちゃんにもやっと心を許せる人ができたんだって安心したけれど、それとこれとは話が違うわよね⋯⋯」
「お願いだから、もう自分を責めないで。私たち、お互いに望んで親子になったはずでしょう?昔の両親は、今頃幸せに暮らしてるだろうし、私も幸せなんだから、それでいいじゃない」
 いつもは気丈な祖母だが、今夜は何故かとてもつらそうだ。
 何だか心配⋯⋯。
 暫くの間、放課後は寄り道することなく、まっすぐ家に帰るようにしよう。

 毎日毎日、冴木さんのところに入り浸るのが習慣だったが、まっすぐ帰るようになって1週間が経った頃。
 ブザーの音に玄関の戸を開くと、そこには冴木さんが居た。
「冴木さん!どうしたの?」