「ただいまー!」
 帰宅すると、私はいつも以上に声のトーンは高く、意識してニコニコし続けた。
「おばあちゃん、冴木さんのところに行ったんだってー?」
 何でもないように尋ねる。
「ええ。あなたが入り浸ってるみたいだから、お礼に行ったの。本音を言うと、少し心配してたのもあるけど、安心したわ。本当に感じのいい人で」
「いい人だよねー!冴木さんも、おばあちゃんのこと優しい雰囲気って言ってた」
 意識的に、明るく振る舞ったのに、
「あずなちゃん。私、今でも自分が許せないわ⋯⋯」
 祖母の声は震えていた。
「おばあちゃん、どうしたの?」
「きっと、私がどこかで間違えてしまったのね⋯⋯あの子のこと、ちゃんと教育してきたつもりだったけれど、私のせいで、まだ幼かったあなたをあれほど傷つけて⋯⋯」
「おばあちゃんは何も悪くないよ!それに私、もう古傷が疼くようなことも全然ないから!」