***
「ありがとうございました」
そう告げて店を出ようとすると、店主はわざわざ見送りに出てきてくれた。一つの商品も買わない、客ですらない相手のために。
そんなに暇なんだろうか? とも思ったけれど、それは口にしないでおいた。
「これはあげるよ」
チリン、とドアのベルを鳴らして外に出ると、彼は軽く押しつけるように私へ小さな巾着袋を手渡してきた。
なにが入っているのかはわからないけれど、初対面の相手からものをもらうわけにはいかない。
「いえ、結構です」
キッパリ告げて押し返そうとしたけれど、優しげな店主は受け取らず「そういえば」と別のことを話し出した。
「俺自己紹介もしていなかったよな」
「え?」
「俺の名前は響だ。覚えておいてくれ」
一方的に名乗った店主――響さんは、優しさの中に甘さを含ませた笑みを浮かべその顔をぐっと私に近づけた。
突然の行動にドキリとした私に、彼は耳打ちする。
「それは受け取って欲しいな、真理ちゃん。再会できたお祝いってことで」
「え?」
再会? 私、響さんと会ったことなんてあった?
それに、私名前教えたっけ?
驚きと疑問に目をまん丸にして驚いているうちに、響さんは店に戻りドアを閉めようとする。
その手には、いつの間に取りだしたのか桜貝が入った小瓶をペンダントにしたものを持っていた。
「ありがとうございました」
そう告げて店を出ようとすると、店主はわざわざ見送りに出てきてくれた。一つの商品も買わない、客ですらない相手のために。
そんなに暇なんだろうか? とも思ったけれど、それは口にしないでおいた。
「これはあげるよ」
チリン、とドアのベルを鳴らして外に出ると、彼は軽く押しつけるように私へ小さな巾着袋を手渡してきた。
なにが入っているのかはわからないけれど、初対面の相手からものをもらうわけにはいかない。
「いえ、結構です」
キッパリ告げて押し返そうとしたけれど、優しげな店主は受け取らず「そういえば」と別のことを話し出した。
「俺自己紹介もしていなかったよな」
「え?」
「俺の名前は響だ。覚えておいてくれ」
一方的に名乗った店主――響さんは、優しさの中に甘さを含ませた笑みを浮かべその顔をぐっと私に近づけた。
突然の行動にドキリとした私に、彼は耳打ちする。
「それは受け取って欲しいな、真理ちゃん。再会できたお祝いってことで」
「え?」
再会? 私、響さんと会ったことなんてあった?
それに、私名前教えたっけ?
驚きと疑問に目をまん丸にして驚いているうちに、響さんは店に戻りドアを閉めようとする。
その手には、いつの間に取りだしたのか桜貝が入った小瓶をペンダントにしたものを持っていた。