こんな高そうな宝石を持つなんてごめんなんだけれど……でも、これを持っていればまた来店する理由が出来る。
 これをくれた意図を聞きに、そして返すためにまた来店しないとって。

 こんな私の思いも見越して響さんはこの巾着を押しつけてきたんだろうか?
 わからない。でもそれも、次に来店したときにわかるはずだ。
 なんだか楽しい気分になって、フフッと笑った私は【KAROBU】に背を向けて歩き出した。



 累と私の間にできた線は、響さんとの縁を結ぶという素敵なことへと導いてくれたみたい。
 アイリスクォーツのように見方を変えればヒビも美しく見える……というのとは少し違う気もするけれど。
 それでも、確かに今は素敵な景色が見える。

 また明日、さっそく来てみよう。
 聞きたいこと、話してみたいことはたくさんあるから。
 

 このときはまだ、私がこの小さな宝石店へ通い詰めることになるなんて思いもしていなかった。


END