みんな、優しく話しかけてくれる楓さんが好きだ。



一通りみんなと話終えると、楓さんは私の所へ戻ってくる。



「桜ちゃんは最近なんかあった?」



穏やかな目でそう尋ねてくる。



この質問も毎週のルーティンだ。



「と、特にはなんもなかったですけど。来週修学旅行があるからそれの準備をしてます」



人見知りでコミュ障だけど、楓さんと話す時間は大切な時間の1つ。



「へぇー修学旅行か。どこ行くの?」


「京都奈良です」



来週の火曜日から金曜日まで3泊4日で修学旅行だからここに来ることが出来ない。



今までほとんど毎週来ているからここに来れないことがあるのは寂しい。



今日は来週来れない分まで楓さんとお話したい。



大して面白くもない私の話を楽しそうに聞いてくれるのは楓さんくらい。



「いいなぁ京都奈良。僕も学生の頃行ったんだけどさー…」



楓さんのお話を聞きながら、笑ったり相槌を打ったりする。



楓さんは店員さんだけどこうやって近くで話していると、そんな気はあまりしない。



嬉しそうに話す楓さんの様子を見て、やっぱり私楓さんが好きだなぁと痛感した。



このカフェのこと、楓さんのこと、みんなには知られたくないと思ってしまう。



私だけが知っていたいなんて思ってしまうのはわがまますぎるだろうか。



猫舌というのを口実にゆっくりとカフェオレを飲む。



本当は、できるだけ長い時間楓さんといたいだけなんだけど。