楓さんのことを諦めた、って訳では無いけど恋愛対象として見ているというのも何か違う。



恋をしたから、私は変わった。



何かを見て綺麗だと思うことが増え、他人に感情を伝えようって思うようになった。



これも全部、楓さんのおかげだ。



「桜ちゃん。今日ケーキ作ってみたんだけど食べる?」


「食べたいです!」



そして、出された美味しそうなショートケーキ。



甘いものが大好きな私にはたまらない。



「いただきます」



クリームが沢山乗ったケーキを1口、口に運ぶと甘さが口いっぱいに広がった。



「美味しい!」



今日は珍しく、心からの美味しいかもしれない。



いつもはこのカフェでは苦味ばっか感じているからかな。



ケーキと一緒ならコーヒーも少しは苦味が軽減されるかなぁなんて、またどうでもいい事考える。



まだ少し残ったコーヒーを1口。



でもやっぱり苦いや。










「じゃあね、また来週」


「はい、また来週」



─────この恋は、ちょっとビターで大人な恋。