「修学旅行は、どうだった?」


「普通に楽しかったです」



私の隣に座り、いつもみたいにお話をする。



楓さんは、変わらず楽しそうな表情を浮かべている。



「なんか桜ちゃん、変わったね」



ふと何かに気がついたような顔になって、見つめられる。



眩しい太陽みたいな笑顔は何も変わらず。



「⋯そーかもです」



ここ2週間、楓さんに「ありがとう」と言われてから1つ大人の階段を登ったような気がする。



新しい気持ちを知ったから。



そーかもですと答えた私を楓さんは優しい瞳で見て、また微笑んだ。



この時間がずっと続けばいいのに、と思ってしまう。



ずっと続くわけないってことくらいわかっているのに。



そしてまだ半分以上残っているコーヒーを1口。



次来る時からはコーヒーを頼もう。



そしたらカフェオレみたいにごくごく飲めないから、楓さんといられる時間が伸びる。