すっかり静かになってしまった店内が気まずくて、寂しくて



「すいません!こんなこと言っちゃって」



なんて誤魔化す。



楓さんは少しだけ頷いてから、



「もう遅いから帰りな」



とだけ言った。



これが「失恋」なのかもしれないと思った。



このまま今日が終わって、次会えるのはまた再来週。



いつまでも縮まらない距離がすごく苦しい。



楓さんは今すぐ隣にいるのに、ここには水族館の水槽のガラスみたいなすごく厚い壁が何層もあるような気がする。



今更、私楓さんに恋してたんだなんて気がついてそんな自分に嫌気がさした。



もっと、早く気が付きたかった。



「じゃあまたね」



そう手を振る楓さんは、とっても遠く見えた。



レジで料金を払って、そのままカフェを出た。



楓さんの言う通り外はもう暗い。



楓さんのいない店外はなんだか酸素が薄くて息がしにくかった。



まだ、私楓さんに恋してる。



あの時、初めて楓さんと話をして笑っていた私と今の私じゃ何が違うんだろう。



失恋という言葉が重くのしかかってきてもうどうすればいいかなんて私には分からなかった。