「なあ、何回言わせんの?」


「⋯⋯すみません」


現在時刻、23時48分。

終電間際だというのに、空っぽのデスクはほとんどない。

蛍光灯の明かりが煌々とする社内に響き渡るのは、タイピング音と上司の声だけ。


「いつまで経っても変わらんな、お前」


「⋯⋯」


「いい?俺がこうやってすぐフォローできんのも、あと3ヶ月しかないの。それまでに、お前は一人前にならなきゃいけないわけ」


⋯⋯これのどこがフォローしていると言うのか。


「12月にもなってこんなミスしてんの、お前だけよ。確かに最初っから要領は悪かったけど、こんな出来損ないだとは」


は〜やってらんねえよもう、とかなんとか言いながら上司が資料を机に叩きつける。


───新卒で入社した4月からずっとこの調子だ。

配属が言い渡され、初めてこのフロアに訪れたときから、殺伐とした雰囲気は感じていた。

自己紹介をする時間なんて取ってもらえず、「教育係、彼ね」と雑に紹介されたのがこの上司。