「家賃の支払い、設定しよ」
「⋯⋯ありがとう」
「ぜーんぜん。あ、ライン交換しとこう」
お互いのスマホを操作し、連絡先を交換する。
新しい友達として追加された“田島 晃大”という文字に、不思議な気分になる。
プロフィール画像はギター。
「(⋯⋯本当に、本人なんだ⋯⋯)」
まだあまり現実味がない。
この先の人生に絶望して、もうどうなってもいいやと投げやりになって着いてった男が、今をときめく人気バンドのフロントマンだなんて。
まさに、“現実は小説より奇なり”だ。
「よし、おっけ。茜、飯食った?」
「⋯⋯食べてない」
「よっしゃ、カップラーメン食おーぜ」
その棚から好きなの選んで、と言われて覗くと、とんでもない量のカップ麺。
種類も味もいろいろで、知らないものもある。
「⋯⋯お店みたい」
「ふは。おれの主食だもん」
「毎日これ食べてるの」
「おう」
「不健康じゃん」
「茜も同じようなもんだろ」
⋯⋯たしかに。