「一応、テレビは出たことあるよ」
そう言いながら帽子とマスクを取る。
───現れた顔を見た瞬間、ひっくり返った。
「えっ、は!?」
「お、知ってる?」
「し、知らない、わけ、ない」
「まじ?うれしー」
雲のように軽い言葉と掴めない雰囲気、切れ長の目、驚くほど綺麗な声。
⋯⋯言われてみれば。
「コーダイじゃん⋯⋯」
「どーも」
コーダイ。
あの大人気バンド、Unknownのギターボーカル。
2年前、空前の大ブームとなったドラマの主題歌を担当しており、世間で知らない人はいないほど有名に。
特にコーダイは、バンドのフロントマンとして一身に注目を浴び、そのルックスと唯一無二の声はたくさんの人を虜にした。
そこからも順調にリリースや音楽番組への出演を重ねていて、今や人気バンドの一角を占める。
⋯⋯そりゃあ、こんなタワマンに住んでるよ。
てか声で気づくでしょ普通⋯⋯。
衝撃が大きすぎて唖然としていると、目の前にご尊顔が現れるので思わず後ずさる。
「ふは、めっちゃ逃げるやん」
「不可抗力ですすみません⋯⋯」
無理無理無理。顔が綺麗すぎる。