でも私は離れたくなくてぎゅっと力を込めた。

「いやだよ…。
啓君、何でそんな残酷な嘘を吐くの?
記憶がないなんて、私、
…1番言われたくない事だよ」

私の目から溢れ出す涙。

「…私は確かに響さんと
小学生の時に出会ってた…。
でも、その前に出会ってたのは啓君だよ…。
響さんと出会うきっかけになったのも啓君。
どうして啓君は私の記憶がないなんて言うの」

「…」

「私が今日パニックになった時だって…
抱き締めて言ってくれたよね。
"柚月俺がずっと傍にいる"って。
あの時みたいに
呼び捨てで呼んでくれてたよね…?」

「…それは若ならそういう風にいって
柚月さんを落ち着かせるだろうって、
そう思ったから言ったと言ったでしょう…」

「それなら私の事を
"ゆづ"って呼ぶはずだよね?
じゃあ何で"柚月"って呼んだの?」

「…」

「啓君、私の事覚えてるよね?
私はずっと忘れてしまってたけど、
啓君はずっと覚えててくれたんじゃないの?」

「…」

「何で皆…何も教えてくれないの?
私はやっと思い出したのに、
どうして誤魔化そうとするのっ…。
どうして啓君も響さんも
何も教えてくれないのっ!?」