「…啓君待って!」

私は咄嗟にベッドから飛び出て
再び"啓君"と呼ぶと

ドアノブに手を掛け
部屋から出ようとした啓君の背中に
勢いよく抱き着いた。

「…ゆ、柚月さ、何して、」

啓君は突然の事に身体をビクッと反応させ
しばらくの間身体を硬直させていた。

少ししてから
お腹に回る私の手をゆっくりと掴むと

「…こんな事したらダメですよ。
柚月さん、若を裏切るんですか?
若は本当に貴方を愛しています。
私は貴方の事は…記憶にありませんから」

そう言って私を突き放し
抱き着く手を必死に離そうとしていた。