「恋。」
帰りのホームルーム後。
宗介は、自分に気づかない恋を訝って、もう一度声を大きくして恋、と呼んだ。
「あ、宗介」
「なにぼけっとしてんだよ。時間割書いたら帰るぞ。早く書きなよ。」
「分かった。」
宗介と恋は、鞄を背負って階段を降りて昇降口へ向かった。
「昨日、恋が言ってた昔の写真を見てみたけど、お前は全っ然変わんないよな」
靴を降ろしながら、宗介が言った。
「うちには僕とお前の写真ばっか。特に幼稚舎の頃の。なんであんなに撮ってあるのかって位沢山あるよ。」
「ふーん」
宗介は笑った。
「幼稚舎の頃お前が僕の頬にたまたまキスしてる写真があって、別にして置いたんだ。見せてやるから今度来な。可愛いよ。」
「ふーん。」
「また家に来た時お前の写真を撮ろうと思って。思い出が増えるのは楽しみになる。カメラ自分の持ってるから、何枚でも撮れるよ。そのつもりで居なね。」
「分かった。」
宗介が言った。
「写真いつまでも残るし、僕達はずっと一緒だね。」
宗介は靴をつっかけながら、しゃがんで黙って靴を履いている恋の頭を、愛おしげにぽんぽん、と撫でた。