放課後。

 男子更衣室から袴を着て出て来た宗介と䄭風は、小声で罵り合いながら部室へ向かった。

 和室の戸が大きく開いて、着物姿の生徒達がバタバタしていたので、2人は部室の様子が普通とは違っている事に気付いた。


「どうかしたんですか?」


 宗介がやってきた先生に聞くと、先生は困り顔で言った。


「部室でちょっとね。狐が出たんですよ。」


 宗介と䄭風の表情が変わった。

 宗介が平静を装って聞いた。



「その狐、どっちの方に行ったか分かりますか?」

「職員室の方に走って行ったけど……今先生方が捕まえようとしてますよ」



 宗介と䄭風は袴のまま職員室へ急いだ。












 職員室では、箒を持った先生が、小狐を捕まえようとしていた。

 慌ただしく職員室に入って来た袴姿の2人を見て、先生は目をぱちくり。

 そしてその生徒が迷い込んだ小狐を睨みつけて、小声で何か囁いたので、先生はもっとびっくりした。


「待て待て今なんて言った?」


 居合わせた教頭先生が、宗介に向かって聞いた。


「ああ、裏山に帰りな、って言ったんですよ。逃がしてきます。」

 
 宗介は小狐を抱き上げながら笑顔で言った。