「この写真、昴夜も買ったら?」

「卒業したら恥ずかしくなるやつだよ、こんなの」

「私は買うよ」


 宣言しながら素早く番号を書き込む。タイムリープの恥はかき捨てだ。


「えー、やめてよ恥ずかし。んー、でも侑生との写真ってそういえばないかも」


 ぶつぶつ呟きながら、でも昴夜も封筒に番号を書き込む。

 それが、注文票の右側だと――つまり左側の番号欄はすべて埋まっているのだと気付いた。


「……他に何の写真買うの?」

「え?」


 バッとでも聞こえてきそうなほど素早く、昴夜が封筒を背中に隠した。


「なんで?」

「いまの番号、右端に書いてたでしょ。他にも……十枚は買うんじゃないの、それ?」

「あー、うん、父さんに写真買っといてって言われたから」

「どの写真?」

「あーっと、ね、どれだっけ、これ、とか……」


 適当に指差された写真には、確かに昴夜が映っている。でも自分の写真なら番号を教えてくれればいい。

 もしかして、昴夜は私の写真を買うのだろうか。

 このときの昴夜は私を好きだという情報が、その自意識を裏付け、私の胸を高鳴らせる。


「番号見せて、私も買う参考にしたい」

「え、やだよ」

「そんないかがわしい写真を買うわけじゃないんだから」

「いかがわしいかもしれないじゃん!」

「なんでそこでムキになるの」


 見せてよ、と手を伸ばし、それをかわされながらも笑ってしまう。ああ、やっぱり、昴夜は可愛い。

 そうだ、だって昴夜は私を好きだったんだから。幼馴染と付き合っていたけれどずっと私を好きだった。でもそんなことは言えなくて、私にバレるわけにもいかなくて、その感情を必死に押し殺していたのだろう。

 この頃の私が、一生懸命侑生を好きになろうとしていたように。

 それが頭に浮かんだ瞬間、ヒヤリと背筋が冷えた。