昴夜を好きだと気付いたときに侑生と別れるべきだった。きっと誰もがそう思う。

 それでも私が侑生と別れなかった――別れることができなかった原因は、きっと一年生の十二月の事件にあった。

 その日の私と侑生は、学校の帰り道で口論になった。きっかけが何だったのかは覚えていない、でもきっと昴夜のことだ。


「好きなヤツの好きな相手くらい分かる」「でも私は侑生とキスしてイヤだなんて思わない」「“イヤじゃない”と“好き”には天地の差がある、英凜にとっての俺は“好きな友達”だろ」――そんな喧嘩をした。

 それでも私は、侑生と付き合うと決めたのに。生半可な覚悟じゃない、侑生を好きになる、そう決めたのに。私はそう泣き出してしまった。

 口論の末、私達は別々に帰り、そして私は運悪く新庄に出くわした。無理矢理|酩酊(めいてい)させられ、乗じて強姦もされかけた。準強姦未遂だった。助けにきてくれた侑生は散々に(なぶ)られ、大怪我をし、頬には大きな傷跡が残った。

 侑生のことは大好きだった。誰よりも特別だった。

 それでも、それが枷だったのではないかと言われると、否定することはできなかった。私も、そして侑生も。