この喫煙所は、遠目からでも分かるような派手な屋根がついているスペースで、その隣には影の薄いテラス席がいくつか用意されている。


どこか哀愁漂う村瀬先生の風貌とは似合わない、喫煙所のオレンジ屋根の存在感に気を取られていたせいか、テラス席にいる隣人に、今初めて気がついた。


隣のテラス席には、不死原君と、女の子が座っている。



うそ。

あー····


久々····。


あ。まずい。

急に緊張してきた。



私がいることに気付いているのかいないのか。

不死原君と私の間には、ちょうど村瀬先生が壁になっていて、気付いていないのかもしれない。


それよりも気になるべきなのは。

先生とは適当に雀荘の話をしながら、彼の隣に座っている女の子をちら見で観察してしまう。

何度か構内で見たことのある女の子だ。

胸元から口のあたりまでを、大きなストールで巻いて寒さを凌いでいる。

作られていない自然なふわふわの髪が、両サイドにもこっと膨らんでいるキュートさなのに、着ているコートはベージュの綺麗めなロングコート。

寒さで手袋をする手をさらに擦り合わせていて、可愛いのオンパレードか。あざとさがどこにも垣間見えなくて、今すぐ金本さんにこの溢れ出る思いを伝えたい。


こんな寒い季節に外のテラスで目立つ2人が何をしているのだろう。

2匹のカピバラが同じ方向を向いて、じっと寒さに耐えているみたい。テーブルには暖かそうな紙コップの飲み物が置いてある。


不死原君は足を組んで、どこか態度がでかそう、いや恰好つけているようにも見えるのはなんでだ。

今まで彼が女の子と2人きりでいるシーンなんて見たことなかったから、どうしても体内の全内臓が震えてしまう。

私の防寒具たちは万全体勢なのに、中身だけチワワの気分。