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「――それで、俺達に一体何の喧嘩を売ってるのかな?」
口火を切ったのはやはりリーダー。腕を組んで不遜な態度で座っている。
「明貴人から聞いたけど、御三家は雨柳透冶の事故死について知りたいんでしょ?」
それに答えたのは偉そうに腕と足を組んだ蝶乃さんだ。単刀直入に本題に入られ、その内容も相俟って御三家の空気が変わった。
「知りたいのは当然。その前提として、生徒会は文化祭を通じて俺達に喧嘩を売るつもりなんじゃないかって聞いてる」
「まあ、そうね」
「まどろっこしい遣り取りは嫌いなんだ」松隆くんは苛立たし気に指を動かし「俺達が勝てば教える、どうせそういう条件なんだろ? 何に勝てばいい?」
「話が早くていいわね。文化祭でコンテストがあるのは覚えてる? それで優勝したほうが勝ち」
「は? なんだって?」
「三日目の最後にあるコンテストのこと」
頓狂な声を上げた松隆くんとは裏腹に、笛吹さんが嬉しそうな声で説明を引き継いだ。
「大丈夫、本当は部活で受け付けてるけど、部活を兼任できないってことで生徒会にも参加権があるし。特別に御三家も許可してあげる」
「待て、俺が言ってるのはそういうことじゃない……」
「それから、条件はあくまで優勝だから。生徒会よりも順位が上だったらいいってわけじゃないの」
「ちなみに、生徒会からは私と明貴人が出るから」
「よりによって会長と副会長か……」
自信満々に言い放つ蝶乃さんとは裏腹に、松隆くんは参ったように額を押さえる。状況が読めず、隣の桐椰くんのパーカーの袖を引っ張った。
「ねぇ……コンテストって何?」
「覚えてねぇ……」
月影くんに聞こうとすると、視線を移しただけで「知らない」と肩を竦められた。
「……勝手に条件を提示した挙句、よりによってそれは勝手だろ。大体、そんな競い方に何の意味がある?」
「どちらがより生徒に支持されてるかを知るチャンスでしょ?」
「支持なんて関係ないし、大体あれはただの媚びだろ。あんなくだらない……」
「ねぇ、松隆くん、コンテストって何?」
はあ……と深い溜息が落ちた。苦虫を噛み潰した顔は、こちらを向きもせず。
「ベストカップルコンテスト、だよ」
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