更に、ある日のの放課後、急にクラスメイトの女子に囲まれて無理矢理教室から連れ出されたかと思ったら、中庭でホースを向けられ、派手に水を掛けられた。頭から爪先までぐっしょりだ。
そんな私の前に現れたのは、やっぱり蝶乃さんだ。その日もその日とて、蝶乃さんは長い髪を嫌味ったらしくふわりと払ってポーズをとる。
「生徒会を侮辱するような生徒は要らないって言ってるでしょ? ね、梅宮さん」
弾けるように、蝶乃さんが呼んだ相手を見た。今この場に有希恵がいることに、一体何の意味があるのか。察するより先に、蝶乃さんが有希恵にホースを手渡した。
「ごめん、亜季ちゃん」
まさか、なんて息を呑む間もなく、まるで水中に飛び込んだかのように私の全身はずぶ濡れになった。ただ、何よりも愕然としたのは、その行為に及んだのが、つい数週間前までは私と仲良くしていた友達だったことだ。
蝶乃さんを皮切りに、女子特有の甲高い笑い声が響き渡った。
「これに懲りたら学校来るのやめなよ!」
「生徒会に逆らった時点で味方なんていないんだからさぁ」
「ま、いい玩具だから暇潰しにはなるんだけどねぇ」
有希恵は、蛇口を捻って水を止めて、ホースを片付けておけとでもいうように、私に向かって放り投げた。蝶乃さんが踵を返すと、他の女子と同じく、有希恵は立ち去った。