そんなことがあった日のお昼、私の前には三人のクラスメイトが現れた。
「桜坂さん、良かったら一緒にお昼食べない?」
舞浜さん、檜山さん、大橋さん。順々に顔を確認したけれど話したこともない人達だ。ついでにリンチというには優しすぎるセリフに首を傾げたくなった。
「……はぁ……いいけど……」
「やった! アタシ達の席の近くで食べよ!」
「あ、うん」
真後ろにいる桐椰くんの顔色を伺うこともできないまま頷いた。
三人に引っ張られるようにして連れていかれ、二つの机をくっつけて、舞浜さんから時計回りに私、檜山さん、大橋さんが座る。
「桜坂さん、せっかく転校してきたのに梅宮としか喋ってなかったからさ、喋ってみたかったんだよねー」と舞浜さん。だったら話しかけてくれればよかったのに……なんて口が裂けてもいえない。
「どうも……」
「最初に絡んだのが梅宮って、桜坂さんついてないよー」
大橋さんはナチュラルに有希恵の苗字を呼び捨てにした。続いて檜山さんも「梅宮、中学の頃から虐められててさ、基本友達いないヤツなんだよね。多分、桜坂さんが何も知らないから、桜坂さんなら絡んでくれるって思ったんじゃない?」とちょっぴり見下した口調で説明してくれる。有希恵と友達じゃなくなってからクラスでの有希恵の立ち位置を知るなんて、なんとも皮肉なものだ。
「桜坂さん、どうせ何も知らないで梅宮と一緒にいたんでしょ?」
頷くと、舞浜さんと大橋さんが顔を見合わせてクスッと笑った。三人の中でもボスっぽい舞浜さんが「知ってるよお、桜坂さんが梅宮を庇って生徒会役員に謝れって言っちゃったこと」とニヤニヤ笑う。
「普通やんないよね、だって相手は生徒会役員で、こっちは庇ったってなんの得もない梅宮だよ?」
「得ってか、損だよね。アイツ、去年蝶乃さんに嫌われた時点でオワってるし」
「いまはその蝶乃さんが副会長だしねー。そんな梅宮に、今更友達なんてできるはずないもん」
生徒会の権威と、その権威に平伏すしかない一般生徒。その図式を生の声で聞かされて、今更ながら、少し背筋が震えた。
「で、も……ほら、今、私、御三家と一緒にいて……生徒会の敵だと思うんだけど……」
「そう、それ聞きたかったの!」
「はい?」
その話題こそ、と、大橋さんは意気込むようにご飯を呑み込んだ。
「御三家って女子に見向きもしなかったのに、なんで桜坂さんが気に入られたのか!」
下僕ですけど。