次の日、下僕仕事記念すべき第一回目。桐椰くんと一緒に生徒会室に行けば、桐椰くんはさも自分の管理下にあるかのような顔で鍵と扉を開けた。


「……なぜ生徒会室の鍵を」

「別に変な手に入れ方してねぇから」


 その表情に少し疑問が生じたけれど「よし、誰もいない」と確認する声を聞いて霧消(むしょう)した。


「女子更衣室はあそこな」


 中に入れということだろう。チラリと桐椰くんを見上げると、犬 (というか(いぬ)?)に命令でもするような態度をとられた。


「私、本当に下僕扱いなんだね……」

「当たり前だろ」


 おそるおそる中を開けると、更衣室というよりは休憩室だった。なにせソファにテレビ、小さな食器棚まである。なんなら奥にはシャワールームっぽいものもあった。


「正役員の人数分、()ってあるはずだ。多少厚いファイルに入ってるだろうよ」

「はあい。ていうか、役員、すぐ来るんじゃないの? 大丈夫?」

「今日は指名から無名まで役員集めてミーティングあるから大丈夫」

「そのミーティング、どこであるの?」

「二階会議室、ちなみに十七時から。無名役員の人数多いからここじゃ入らねぇんだよ」


 まるで生徒会役員みたいによく知ってる。そう感じたせいで、テレビボードの中を漁りながら、ふと思い出したことがあった。


「ねぇ、桐椰くん、この間言ってたよね。殺されたとかなんとか。あれってなんだったの?」


 あのときの口ぶりは、比喩(ひゆ)でさえなく、文字通り誰かが生徒会に殺されたかのようだった。


「……桐椰くん?」


 返事がない。顔を向けると、桐椰くんは扉を背に、静かな表情で少し(うつむ)いていた。


「……その話はまた今度な」

「……まあいいけど。下僕扱いだから何も教えてもらえなくても仕方ないもんねー」


 引っ張り出した書類の中身を軽く(めく)っていると──あった。『四月役員会議議事録』と表紙に書かれていて、左側をホッチキスで留めてある冊子。


「桐椰くん、あったよー」

「早いな。んじゃとっとと出るぞ」

「コピって戻すの?」

「あぁ。だから早く外に──」


 女子更衣室を出ながら話していた、その時。