「お前、男女の差って何か分かる?」

「性別」

「お前マジで一発ツッコミ入れてほしいらしいな」


 途端に鬼人のような表情に変わって立ち上がり、バキボキと拳を鳴らされた。あぁ怖い。


「冗談だってば。差、ってそんな漠然とした聞き方されても分からないけど……」

「じゃあ質問を変えてやるよ。お前、男子更衣室に女子がいたらどう思う」


 ふざけているのかと思ったけれど、桐椰くんも松隆くんも至極真面目な表情をしていた。


「……間違えて入ったとかじゃないの?」

「じゃ、男子が女子更衣室に入ってたら?」

「変態か下着泥棒だと思う」

「それが差だよ」


 自分で出した答えに、口を(つぐ)んだ。

 桐椰くんは満足げに頷き、松隆くんは困ったように溜息を吐いた。


「御三家のメンバーは、俺と、遼と、もう一人、月影(つきかげ)駿哉。つまり男三人だ。俺達は生徒会を潰したいけれど、男三人だとどうしても入れない場所があって、そのせいで調べられないことがある。残念ながら女装できないゴツイ男しかいないし」

「確かにゴツイ」

「男らしいって言え」

「話の腰を折るなよ……。だから端的に言って、女子が必要なんだ」


 松隆くんはその長い人差し指を唇に当てて見せた。たったそれだけの仕草なのに、妙に艶やかに見えて、思わずドキリと心臓が鳴った。


「そこで女子を探してたところに、遼が君を連れて来た」

「なにそれ……なんで私にしたの……」


 どうやら妙なことに巻き込まれたようだぞ……。疲れた顔を向けると、桐椰くんはさらりと告げた。


「お前、生徒会筆頭に三週間虐められてるらしいじゃん」

「え、マジ?」松隆くんが驚いた声を上げ「マジです」私は至極真面目な顔で頷き「それなのにゴミ処理用のビニール袋持ち歩いてるとか、学習能力と根性あるなと思ってさ」桐椰くんが笑い「ははっ、確かに」松隆くんまで声を上げて笑う。