──…人生で初めて、異性に抱きしめられた


これがハグというやつか、なんて…一人このアオハル展開に胸を踊らせていると、、



「…あんまり、俺以外の男子と親しく話したりしないで欲しい」


弱々しい声でそう言った彼に、驚きを隠せずにいると「……分かった?」っと答えを催促するような発言をされたので首を何度も縦に振っておいた。



少しして身体が解放されたのですが、なんとも気まずい雰囲気が流れ…二人横並びに並びつつも無言で廊下を歩いた。



一体何処へ向かっているのか…聞きたくても聞く勇気がなくて黙って瀬戸くんの隣を歩いていると、、



「…ここで食べよう」



たどり着いたのは非常階段で…非常時でもないのにドアを開けてそこに侵入することに多少の躊躇いはあるものの、瀬戸くんが言うなら従おうと…一緒に非常階段で昼食を共にすることになった。



持参したお弁当箱を広げると、隣から突き刺さるような視線を感じ…チラッと瀬戸くんの顔を見てみる。



「……美味そう」


美味しそう、だと言ってくれたお弁当の中身は…可愛らしいグラタンやタコさんウインナー…ハート型の卵焼きなんかが入っているお弁当ではなく、、茶色一色。きんぴらごぼうや、味付け玉子、ほうれん草の胡麻和えや焼き魚…といった年寄りじみたお弁当。



現役キラキラJKが食べるようなカラフルな食材などは一切使用されていない古風なお弁当。これは前日の夜に自分で手作りしている。



「ババくさい…とか、オッサンみたいってクラスの友達には毎日言われてるけどね」



いただきます、と手を合わせて自分のお弁当を食べていると物欲しそうにこちらを見つめる瀬戸涼太の視線を感じるので…味付け玉子をひとつ箸で摘んで彼の目の前に差し出した。