腕を引かれたまましばらく歩いてから…突然廊下のど真ん中で足を止めた瀬戸くん。
どうしたのかと、顔色を伺うように下から彼の顔を覗き込めば─…
「せ、瀬戸くんっ…?!」
私の腕を掴んでいた手を離し、そのまま自身の顔を手で覆った彼は…その場にしゃがみ込んだ。
「あ…あのっ、瀬戸くん、」
「……ごめんっ、山岡に馴れ馴れしく呼び捨てで呼ぶなとか言ったけど…俺も勝手に、、結花って、」
…………そんなこと?
ってくらい些細なことを気にしている様子の瀬戸くん。このままでは昼ご飯を食べることなく休みが終了してしまう。何とかして瀬戸涼太に二足歩行を再開してもらわなければ!!
「……りょーた…、」
小声で彼の下の名前を呼んでみれば…勢いよく顔を上げた瀬戸くん。彼の目を見てもう一度、
「涼太……」
とハッキリ名前を呼んでみせれば、みるみる赤く染る瀬戸涼太のご尊顔。
「これで…おあいこね?ってことで…お昼休み、終わっちゃうから、そろそろ移動しよう?」
しゃがみ込んだままの彼にそっと手を差し伸べれば…素早くその手を掴んだ瀬戸涼太は、何を思ったのかそのまま手を引いて…自身の腕の中に私を閉じ込めた。