「…いや、あんたの食べかけなんて瀬戸くんが食べる訳ないでしょ。てか瀬戸くんに濡れおかき渡すとかないわ…チョコレートとかキャンディとかもっと可愛らしいものっ、」


「………これがいい」


「……は?」


「臼井さんの食べかけの濡れおかきが食べたい」



今日もエモさ全開の瀬戸涼太。私は既に昨日のやり取りで免疫があったのでさほど驚くことではなかったが、目の前の親友やクラスメイトたちはそうでは無かったみたいで。



「「「(どーした、瀬戸涼太…?!)」」」



という視線を独り占めにしながら、私の手の中から食べかけの濡れおかきを受け取った瀬戸くん。



「……あれ、食べないの?」



ジッとただそれを眺めている瀬戸くんは、なかなかそれを食そうとしない。不思議に思いながら見つめていると



「もったいないから……」


なんて言うから今度はこちらが赤面してしまう。


恥ずかしさを誤魔化すように2、3枚追加で濡れおかきをかじって…それを半ば強制的に瀬戸くんの口の中に押し込んだ。



「……美味しいでしょ?」



と笑いかければ、口をモグモグさせながら昨日と同様にガタンっ…と後ろの机に手をついてバランスを崩した瀬戸涼太。



「……それは、反則だって、、」


困ったような表情を浮かべながら、何とか体制を戻した瀬戸くんは、、


「昼休み、一緒にお昼食べよ」


っと一言だけ言い残し、私から受け取った濡れおかきを大事そうに手に持って教室を颯爽と出て行った。