「秀ちゃん……?」
「 別に作り直さなくてもいいんじゃない? 味はさて置き、食べられないこともないんだから」
「でも…」
「じゃなきゃ使われた食材たちが可哀想でしょ。 せっかく食って貰えると思ってウキウキしながら待ってたのに、少し食べただけでゴミ箱に放り込まれるだなんて」
「そ、それは、そうかも知れないけど……」
「この鶏肉だって今頃、絶対に不安に思ってるよ。 あぁ、俺、もしかして莉子に失敗される為だけに生まれてきたのかなって。 むしろ嘆く声が俺の耳に聞こえてるから」
早口でそう捲し立て、秀ちゃんは失敗してしまった料理をテーブルに置き「いただきます」と言って食べ始めた。
そんな秀ちゃんの姿に動揺しつつも同じように座って食べ始める。確かに秀ちゃんの言う通り食べられないことはない。だけど、やっぱり美味しくはない。
それでも目の前に座った秀ちゃんはそれ以上、文句を言うこともなく、普通の顔をして黙々と食べている。さっきまでのお説教がまるで嘘のよう。何なら普通の会話も始まって和やかな空気が流れてる。いいのかな……。これで……、と少しだけ疑問。
作り直すにしたって既にお皿は半分くらい空いちゃったけど。