「い、今…っ!!」
「うん?したね。キス」
驚く私に秀ちゃんは何処までも余裕そう。何だかちょっと悲しい。
「うぅ…。初めてのキスだったのに」
秀ちゃんは気まぐれだったのかな?落ち込む私に秀ちゃんは目を細めて唇の端を釣り上げた。
「ふーん。初めてだったんだ?」
そう言って私の髪を撫でてくる秀ちゃんに胸が高鳴る。キスしたからかな?何だか秀ちゃんを男の人として意識しちゃう。恥ずかしくなって俯いた私を気にする様子もなく、秀ちゃんは……。
「初めてなら仕方ないなー。責任取らなきゃだし、俺の彼女になっとく?」
今日カラオケいく?みたいな軽いノリでビックリすることをサラッと聞いてきた。
「……え?」
驚いて思わず顔を上げた私。秀ちゃんはそんなすっとぼけた私の態度に腹がたったのか眉間に皺を寄せた。
「何? 人に求愛をさせておいて応えないの? まさか保留とかにするつもり? そんなの "はい、そうですか" って許すわけないでしょ」
……と、不機嫌なオーラを出しながら言ってくる。
「え?でもっ……」
「断るなら断る。受けるなら受ける。はっきりしなよ。俺、中途半端なの大嫌いなんだけど」
秀ちゃんはそう言い放つと目を細めて私の髪から手を離した。ドンドン不機嫌になっていく秀ちゃんに血の気が引いていく。でも、断るとか受けるとか以前に。
「秀ちゃんって私のことが好きなの?」
それが1番気になる。好きで言ってくれてるならいいけど、本気で責任とか感じて付き合うつもりなら悪いし……。ちょっと戸惑い気味に秀ちゃんを見上げたら秀ちゃんは、ふっと鼻で笑った。
「何それ? 好きとか愛してるとか言えば納得するわけ? それを言えば梨子は喜んで俺の彼女になるの?」
「違っ……」
「そんな安っぽい言葉たちを並べれば満足? 歯の浮くような台詞を言えば梨子は俺のことが好きになるの?」
堰を切ったように私に質問攻めをする秀ちゃん。勢いに押されて何も言い返せない。そんな私を見下ろして秀ちゃんは重たい溜め息を吐く。