「…いやそれ、俺が書いたわけじゃないけど?」

「うんっ…でも一度は成川くんの手に渡った上でこうして律儀に返却してもらえて戻ってきたってことは…もはやこれは成川くんから私への手紙だということには、」

「ならねぇよ…何理論だよ、それ」


呆れたように少し息を吐いて、重なっていた視線を足元へ落とした成川くん。この貴重な時間もそろそろ終わりを迎えるのかと悟った時─…


「……前置きって言い方は、失礼だった」


彼の小さな声が耳に届いた。


「ちょっと、急いでたから…完全に八つ当たりだったと思う。悪かったな」


落としていた視線を持ち上げ、私と再び目を合わせる成川くん。そんな仔犬みたいな尊い瞳で見られたら…もう何も言い返せないよ。



「……じゃあ、」


っと…今度こそ図書室を出ていこうとした彼の後ろ姿をしっかりと目に焼き付けていると…ふいに立ち止まった彼がもう一度こちらを振り返った。