「なっ、成川くん……え、なんでっ、いつから」

「入学試験の…、っとか語り出したあたりから」

「(…序盤から聞いてた感じですか。詰んだ)」


なぜ戻ってきたのか見当もつかないが…彼は何とも気まずそうな表情を浮かべながら、こちらへゆっくりと着実に歩みを進め向かってくる。


(え…なに?!私、なにか怒らせるようなこと言ったかな?!)


彼が近付いてくる度に、心拍数が上昇していくような気がして…心臓がドクドクと胸を打つ振動がとてもよく伝わってくる。


やがて…私の目の前まできた成川くんは、視線を合わせるようにしてその場にしゃがみこむと、、


「……これ。返し忘れたから」


っと、私が彼の靴箱に忍ばせた例の手紙をこちらに差し出してくる。反射的に受け取ってしまったのだが─…


「いや、捨ててくれて良かったのに…」

「…誰かに拾われて、悪意のある使い方をされたら傷付くのは俺じゃない。」

「……え…?」

「じゃあ…それ。ちゃんと返したから」


そう言って立ち上がった彼は、再びドアに向かって歩み始める。