「……なに」
機嫌の悪そうな表情を浮かべながら、低い声でそう呟いた彼に、
「おはようっ!」
っと、一言だけ挨拶をしてみせると─…
「………はよ」
かなり小声ではあるが、一応返してもらえた。
少し気まずそうにしているところを見るに、どうやら昨日の出来事を彼も忘れたわけではないらしい。
さて…女友達第一号にして欲しいと、今ここで言ってしまっていいものか。悩ましいところだ。
他にも多数生徒がいるこの場所で、目立つ行動を取るのは…マイナスになる気がする。ここは出直して、昼休みにでも成川くんの教室に─…
「……それ、」
「…え……?」
続きはまた学校で…っと、一度別れようと考えた矢先。彼の方から話しかけられるという予想外の展開にフリーズしてしまう。
「その、鞄についてるやつ」
私の鞄を指さして”それ”に視線を送っている成川くん。近頃若者の間で流行っているハムスターのアニメのマスコット人形だ。