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翌日の朝─…
母と共に朝食をとっている際に、告白して振られた話しを悲しい話ではなく自虐ネタとして暴露しているところに、5歳年上の兄が乱入してきた。
「っえ……告ったって?誰が、だれにっ」
「ん?だから、私が成川 凪琉くんに」
「……なんとかなる?」
「な・る・か・わ・な・る!!!」
ご馳走様でした、っと手を合わせて食器を台所へ運ぶ私の後ろをついてくる兄、音弥《おとや》。その様子を見ながら母は嬉しそうに笑っている。
身長が160センチにも満たない私とは違い、兄は長身でスタイルもいい。
遺伝なのか…私も兄も髪色は真っ黒ではなく少しブラウン味を帯びているが、大学生の兄はその髪色を更に明るく染めているので見た目にチャラそうな印象を与えがちだ。
昔から“似てる“と言われたのは二重まぶたの丸型の瞳だけで…その他のパーツは全て兄に、いい所を持っていかれたと、私はそう思っている。
「音くんは本当に、絃ちゃんが心配なんだね」
なんて、そうやって言われると兄の株が爆上がりするだけだと思うが…そんないいもんじゃない。
「……てか、絃のことを振るって何様だよ。なんとかなるって名前のくせに、全然なんともなってねぇじゃん」
「うん、成川凪琉くんね?」
「なんにもできねぇ男に、絃を任せられない。向こうに振られたってのが癪に障るが…この恋は早く忘れろ、お前には不要な男だったってことだ」
という具合に…ただ単に妹を心配している兄というには少々行き過ぎたところがある。
溺愛…とか、自分で言うのはどうかと思うのでそんな言葉は使わないが…兄は妹依存症候群だと私は密かに思っている。